【野球】(イップス論③)実践的・技術的な克服方法(正しいスナップスローとは)

イップスの技術的克服

ここまで、イップスになる原因を見てきました。この記事では具体的なイップス克服方法をみていきます。また関連して、スナップスローについての正しい解説をしていますので苦手という方は是非ご一覧ください。

イメージ「真横にバレーボールをスパイク」or「ドッジボール投げ」

リリース位置をどこにイメージを持ってスローイングするのが適切か。どれくらい手前で球を放すと力を入れられるのかをイメージしてもらうため、バレーボールのスパイクを真横に飛ばす運動を考えてみましょう。強く打つには、インパクト位置は(床に向かって打つ)通常のバレーのアタックよりもさらに手前(背中側)にしなければなりません。スローイングの場合、上半身の延長線上にリリースポイントが来ることが多いです。「いやいや、うまい人のスローイングを横から見たらやっぱり顔よりも前で球を放しているよ」と思う人もいるかもしれませんが、それは①ゆるく投げているor②上半身が前傾姿勢、のどちらかです。

バレーにおいて、打点を前の方(カラダの遠くの方)に球を置いてしまうと、腰が引けた形になり強く叩けません。スローイングのリリース位置も同様で、カラダの近く(腕を頭側に近づけるという意味ではなく、思っているより背中側という意味)で肘が伸びるポイントが適切です。

宮本真也元ヤクルトスワローズ内野手は片岡篤史チャンネルの中で、体重がすぐに前足に乗ってしまうのを修正する方法の1つとして、ドッジボールを投げることが有効だとしています。(勝手に)手が顔から離れた(=肘が伸びる)ところで投げようとする(=耳の近くを肘が抜けるのではなくキレイなスリークォーターになる)から、とのことです。つまり、重いものを投げる時には体が自然と力の入る正しいポイントで投げようとするということです。(昔から重い球を投げる練習はあったと思いますが、当時僕は単なる筋トレと思っていました。)

※ドッジボール投げの効果は他にも重要な点を宮本氏は指摘していますが、それはまた別の記事で紹介します。
(↓通常のバレーのスパイクのインパクト・ポイント)

【バレー講座】これはNG!スパイクが上達しない人の打ち方(ビークイック)

(↑)バレーの場合は、地面に向かって打つ&飛びながら打つので前傾姿勢を取れない、ので背中の延長線上(緑線)よりも前でインパクトします。

アンダースローやサイドスロー(ピッチングでも二遊間のスナップスローでも)のリリースポイントの感覚も同じような発想で考えれば、力の入れやすい位置は、カラダの前ではなく横のあたりにあるということが分かると思います。

【脱線コラム:「腰の入った」パンチ】

ボクシングのパンチにおける、腰の入ったパンチと手打ちパンチの違いの要因を、力の入る位置(カラダの横)でインパクトできているかどうかでも説明できます。腰を回してその回転が加わるから強いパンチを打てる、という説明は部分的であり、腰を回すことで相手をカラダの前でなく横でインパクトできるから強く打てるとも言えます。

村田諒太が教えるパンチの打ち方【フック篇】

理想的なスローイング指導例(元中日・巨人 井端氏の場合)

野球YouTubeチャンネルのクーニンTVに出演した元プロ野球選手の井端氏(手のヒラで押せ!井端和弘さんに垂れないスナップスロー教えてもらった)は、スナップスローのコツを聞かれ、「肘を肩より前に出さない」としています。リリースポイントがカラダの横あたりにあることを正確に認識しており、スローイングのコツとして「押し出すのではなく、カラダの近くで放す」旨指摘しています。

※繰り返しになりますが、「近く」というのは投げる方向に対して手前の自分側(背中側)という意味でここでは使われています。肘を曲げて顔の近くを通す訳ではありません。

このブログで色々と言ってきたことも一言で言えばこれに尽きてしまいます。(注釈 動画タイトルには「手のヒラで押せ」とありますが、手の平で押すのはリリースの瞬間の井端元選手のスナップの感覚の話で、スローイングにおいては「押し出す」のは悪い例として同動画内で井端元選手は指摘しています。)

なお、肘を肩より前に出さないというのは、あらゆるポジジョンの投球動作において共通します。近距離で緩く投げる時には肘を突き出して球を撫でるように投げることができてしまうので、一流プロでもそうならないように敢えて引き気味のリリースポイントを強く意識しているということです。

そもそも、全力でない微妙な加減が必要な動作はスポーツにおいて難易が高いものであり、特に意識して気をつけるのは当然です。近距離の送球が苦手なことは全く恥ずかしいことではありません

有効な指導法(シンプルに考えよう)

練習法:フォロースルーを止める(これだけ!)

(過去の記事にある正しいイメージを理解しているのを前提として、)リリースポイントの位置を強制的に手前にする方法があります。できるだけテイクバックを大きくとってスローイングを行い、フォロースルーを前方45度で停止することです(いわゆるスナップスロー、後半に詳述)。この位置でフォロースルーを止めるためには、その大分前にリリースが終わっていなければならない。意識するだけでリリースポイントが手前に移動します。結局、井端元選手の動きに全てが凝縮されているのです。バレーのスパイク後のフォロースルーのフォームにも似ています(オーバーハンドの場合)。

内野手で投げ終わりに手を送球方向に向けている選手(↓写真参照)が多いのはこの動作の延長であり、これらの動作によって肘が前に出てリリースポイントが前になって結果置きにいくようなスローイングになることを防いでいます。この点を特別意識していない選手も多いがここが肝です。スナップスローとも呼ばれるがカラダの前で特別に手首を効かせて投げているわけではないです。むしろ意識しなければならないのはスナップではなくリリース位置です。ましてや格好をつけるためにやっているものでもない(念のため。僕はそう思っていた時代がありました。)。

坂本選手をお手本に!守備の間⚾︎(読売ジャイアンツ)

なお、フォロースルーを止めると言っても、必ずしも小さく投げる必要はありません。腕の使い方を意識するために正対して二塁手のゲッツー時のように投げることもあれば、時にはカラダを大きく使って軽く助走もつけて投げたりしながらも、フォロースルーを止めることを意識(結果45度で止まらなくともよい)することで、リリースポイントが前にならずにカラダの近くで肘が伸びた状況で球を叩く感覚を養いましょう。キャッチボール中は近距離はもちろんである程度離れた時も意識する方がいいです。

リリースの意識(正しい手首・指の使い方)

上記でスナップスローは手首を効かせないと説明しました。これは投手含む通常のスローでも同じです。どういうことか説明します。

またまたバレーボールで考えます。なぜバレーボールではスパイクを手のひらでなく手首で打つか。手首より上は柔らかいので手がぐしゃっとなり力を球に伝えられないからです本来、力を伝える点は硬い方がいいのです。

スローイングでも同様です。アーム式のピッチングマシーンのアームの先の方が柔らかかったら力は伝わりません。リリースの瞬間までは手の役割はボールを運ぶことのみでリラックスしていればいいですが、リリースの瞬間は手が球に負けないように手首を「(指先ストッパー付きの)棒」にする必要があります。手首がぐにゃぐにゃではダメなのです。さらに、指をしっぺするように真っ直ぐに伸ばしてリリースするイメージは間違っています。初めから指が反っていては、指が球に負けて反れてしまい、力も入りませんし送球は上に抜けます。リリース時は、(球を握った形のまま)指を少し曲げて「球に押されても負けない」形を作らないといけません。「ボールを弾く、切る」と言った表現と実際には大きな乖離があることを意識しましょう。手のひらや指を意識的に反らせる必要はありません。

https://www.tokyo-sports.co.jp/baseball/970687/attachment/藤川球児に投球フォームがそっくりな小野/

この手や手首の動きについて、より専門的に知りたい方は、「ピッチングメカニズムブック(著:前田健)」の182-189頁を参考にしていただけたらと思います(トップからリリースまで手首はまっすぐのまま固定されている)。前田健さんは現実の動きをよく理解された素晴らしいトレーナーだと思います。

参考:野手スローイングにおける脱力と外旋の最大化

この他、野手のスローイングにおける脱力と外旋の関係についても解説しているものとして下の記事があります。色々考えすぎて腕に力が入ってしまうという人に是非読んでいただければと思っています。

以上、実践的なイップスや送球難の改善方法をみてきました。スナップスローを通常のスローとは全然違うものと思っている人は多いかもしれないですね。

次の記事では、これまでの話を踏まえて、その練習はちょっとやめておいたほうがいいのでは、というものを紹介していきたいと思います。

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