センスを感じさせる柔らかいスローイングのたった1つのポイント(「どこで」脱力するか)

イップスの技術的克服

スローイングに関して、これまでにも(特にイップスに関連して)いくつか記事を書いてきました。その中では、イメージと実際の動きのズレに着目して、スローイングがうまくいかないと原因となる可能性があるものを指摘してきました。本記事では、(特に非投手の場合)そもそも意識・イメージすらしていないが、実は意識することで野球センスが大きく向上する「テイクバックからの腕のほどき方」について解説します。「腕の柔らかい使い方」、「柔らかいスローイング」と呼ばれるものが何なのか解説します。

腕の使い方の確認(内旋→外旋→内旋)

以下、基本的には内野手のスローイングのイメージを前提にして考えていきます(が、どのポジションでも同じことです)。

まず、スローイングにおける(肩ではなく)腕の動きを確認します。捕球後、耳の横あたりに球を持ってきます(テイクバック)。このとき、腕の形はいわゆる内旋といって、(言葉で説明するのはやや難しいですが)銃を突きつけられて軽くバンザイした体勢から、肘は固定したまま手を前に倒した時の腕の捻り方をしている状況になります。

この後、リリースに向けて一旦腕をほどき外旋させます。つまり、先程の逆でバンザイの体勢から手を背中側にひねる方向です。そして最後、リリースの際は、その外旋させた手を再び内旋させて球を放ちます。まとめると、内旋→外旋→内旋、です。内野手は正確なスローイングが求められるので、どうしても腕が縮こまった固い(=外旋の小さい)投げ方をしてしまう人が多いです(いわゆる野手投げ)。

内旋(テイクバック)
外旋(手が正面から見えないほど深い)
内旋(リリース)

外旋の最大化には脱力がマスト

この記事で強調したいのは、2つの内旋の間にある「外旋」をどれだけ意識できているかということです。球を放つ前の、弓矢で言えば弓が最大限引かれた状態(「最大外旋位」といいます)。これを大きく深くできればいい球が投げられます。そして、そのためにはリラックス・脱力が最重要であるということ。結果として自然で柔らかいスローイングに大きく近づくということです。以下、詳しく説明します。

外旋を作るためにはどうすればいいかというのは、以下のクーニンTVの動画「野手投げが15分で直る…驚異のラリアット投法。」の04:47-でヌンチャクを使って上手く説明されています。

※矢印及びバツは筆者追記

手を方の後ろの方に倒すのではなく、手を残したまま力を抜いてグッと投球動作に移れば、手が後ろに置いていかれて外旋した形ができるということです。グッと腕に力を入れたままではこの形は綺麗に現れません。西武・源田選手や巨人・中田翔選手など、安定して力強いスローイングを行う選手はこの形がとても綺麗にでます。

念のための注意点としては、外旋を大きくする動作は上記の通り、力を抜いて手を後ろに残したままにすることで生まれるものであり、いわゆる「肘を抜く」ような動作ではないという点です。

投球時に「脱力」を意識することの効用

近距離のキャッチボールが苦手な人は、一球目から暴投してしまわないかドキドキしながらスローイングしていると思います。「どこで球をリリースするか」「どういうフォームで投げるか」、色々考えると余計に腕に力が入ってしまうこともあるでしょう。本記事で紹介したように、テイクバックまで球を引き上げた後は、むしろぶらんとリラックスして腕の力を一旦抜いた上で、体全体でグッと進行方向へ力を加えて上げることで、外旋した形が現れ、そのしなりだけでキレイに投げられます。一度試してみてください。また、守備の中においても送球動作の中で脱力を意識するポイントがあることで、プレー全体がよりスムーズになると思います。結局のところ、あらゆるスポーツの極意は脱力・リラックスに行き着くのではないかと思っています。

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