【野球】(イップス論①)リリースポイントの誤解

イップスの技術的克服

こんにちは。野球大学のヤスです。

イップスとは何かをまず説明した上で、イップスの人が陥っている、リリースポイントの勘違いを解説していきます。

イップスとは何か

イップス発症のきっかけ

ある日、突然、人によっては公衆の面前での暴投や、怖い先輩・コーチによる叱咤、ケガによる違和感などを契機としてイップスが発症するとされています。ちなみに、僕は肩の痛みを庇うようになり次第に投げ方が分からなくなり発症しました。

イップスとは(スポーツ上の一般的な定義)

 イップスとは、一般にそれまでは無意識にできた動作が突然できなくなることです。言葉自体はゴルフを発祥としているようですが、多様なスポーツで見られる症状です。そして、その原因及び治療法は未だ解明されていません

イップスの分類

その原因を技術的なもの、肉体的に蓄積された疲労、脳の誤作動(職業性ジストニア)、心理的なものとする説などがあります。実際には複合的なケースもあるでしょう。体を休めた方がいいのか、基礎的な反復動作を積み重ねた方がいいのかすら簡単に答えは出せません

技術的要因にまず焦点を

野球大学では、まず「そもそも技術的に正しいスローイングの動きってどんなものだったっけ?」という点を明らかにします。今まで何も考えずにできていたのだから、何も考えないことが1番大事という考え方もあります。しかし、今まで思い込んでいたイメージが間違っていないか確認しなければなりません。

特にイップスは、元々送球に苦手意識があり、それが何かをきっかけに悪化したというケースが多いとされています。技術的な修正が必要である可能性は高いです。

プロ野球選手のイップスの原因も技術面?

本稿執筆の参考にした『イップス』(角川書店、宮澤優 著)に、イップスに苦しんだスポーツ選手として野球選手では岩本勉氏(元日本ハムファイターズ投手)、土橋勝征氏(元ヤクルトスワローズ内野手)、森本稀哲氏(元日本ハムファイターズ外野手)へのインタビューが収録されています。著者は、各選手には中学・高校時代からその兆しがあったという共通点を指摘し、他競技含めて技術的な欠陥がイップス発症の要因ではないかとしています。

イップスの原因

送球イメージが実際と乖離

無意識にできていたスローイング動作を何かをきっかけに極端に意識してしまうことがイップスの入り口です。そして、今まで無意識に出来ていた実際の動きと、頭で描いていたイメージが大きく乖離しているとイップスが発症してしまう、私はそう仮説を立てています。つまり、現実とは乖離のある、理にかなっていないイメージそのままに自分の体を動かそうとしてしまい、上手く投げられなくなっていくのではないでしょうか。

スローイングのリリースポイントはどこか

スローイングにおける、正しいリリースポイントは(目標物に正対しているとすれば)体の「横」です。肘は体の横で既に伸び切り、リリース位置がカラダより前に大きく出ることはありません。多くの人がイメージしているより手前(=背中側)ということです。これはポジションを問いません。以下の各画像・動画で確認しましょう。

坂本勇人スローイング動画(原田純也)

甲斐拓也スローイング動画(ramjam51野球TV)

源田壮亮スローイング動画(パリーグTV)

田中将大ピッチング動画(info box)

イップスになる人の誤解

リリースポイントが視界の中にあるという勘違いをしています。結果として、前につんのめるような、まるでダーツを投げるようなリリースとなってしまう。肘が抜けるとか、腕が縮こまるとも表現されます。体の横に手が来た時点で投球動作は終わりなのに、「目に見えるところでリリースする」プロセスがまだあるものと誤解してしまって上手く投げられない。もっと早くリリースすることをイメージしなければならないのです。

イップス発症時のリリースポイント

イップス克服挑戦中(当時)の野球YouTuber向さんの動画を見ていきます。

イップス克服中の野球Youtuber向さんの投球

イップス克服中の野球YouTuber向さんの投球

(↑)肘の位置的には、もうリリース済みでもおかしくないが、まだ球が耳の近くにあります。

(↑)リリース時に肘が曲がってしまっています。リリース位置がこれぐらい前方にあると思っている人は多いかもしれません。リリースポイントを前にして投げようとするとどうなるか。そのリリースポイントで肘をまっすぐ伸ばしてしまうと球を地面に叩きつけることになるので、横方向に球を飛ばすために肘を曲げ、手首も無理やり起こすので硬直しているような感じになります

(↑)強い球が投げられた時です。リリースポイントは無意識に力の入れやすい適切な位置に、つまり(球を上から潰すイメージで投げても横方向に力を伝えられる)手前の方に移動します。肘を早く伸ばしきることができるこれが、イップス発症者の多くが「思い切り投げる時には良いボールが投げられる」と感じる現象です緩く投げる時にも、この同じリリース位置を意識して投げられるようになれば、イップスは治ります

いろんなアドバイスを真に受けてはダメ。絶対。

球の握り方・心持ち・リズム・テイクバックや、手の平のマッサージについて、指導者やチームメイトが思い思いのアドバイスをします。本人も「何となく良くなったかも」と言って改善した気になりますが、大半の場合はバッと強めに投げることで自然にリリースポイントが適切な場所に一時的に近づいただけです。その位置を意識して習得しないと、緩く投げたい時や大事な場面での正確なスローイングに結びつきません。また、「強く投げれば投げられる」のままでは常に強負荷が肩肘にかかるので故障につながります。長く野球を続けるためにも緩く投げられるようになる必要があります

スローイングはほとんどの人が感覚で投げています。イップスになったことがない人は投げることについて悩んだことがありません。アドバイスが的確である可能性は残念ながら低いです。

明豊高校の川崎監督「スローイングを教える怖さ」

同監督は、『高校野球界の監督がここまで明かす!打撃技術の極意(著:大利実)』において、スローイングを教えるは難しく、「リクルートの段階でキャッチボールがしっかりとできる子」をよく見ているとのことで、理由を以下のように語っています。

スローイングに関しては、僕自身が苦労したことがないんです。考えずにできてしまっていた。人に教える、伝えるとなると、自分ができてしまっていた分、難しさを感じます。

真摯な姿勢に好感が持てます。しかし一方で、スローイングには体系的な指導方法が確立されていない現実を認識させられます。

具体的なイップス克服法を次の記事で説明していきます。

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